父親、「父さん、仕事に行って来るよ」
祖父、「・・・」
父親、「お爺ちゃんのこと頼むな」
私、「うん」
学校へ行く時間になったたため
私、「お爺ちゃん、学校に行って来るね」
祖父、「・・・」
話し掛けても祖父がノーリアクションなのは、用を足す以外、ベッドで横になっているから。

父親に「お爺ちゃんのこと頼むな」と言われたのは、今日から家の塗り替えが始まるから。
家の玄関ドアを開けて私が挨拶をしたのは、家の塗り替えをしてくれる業者さん。
私、「家のカギは・・・」
業界さん、「玄関のカギも部屋のガラス窓も、閉めてくれて構わないよ」
このことは父親から聞いて知ってはいたが、閉めた状態で塗り替えが出来るのか疑問だっため、一応、聞いてみた。
私、「家にお爺ちゃんが居ますけど、応対は出来ないので宜しくおねがいします」
業者さん、「お父さんから聞いて知ってるよ」
お爺ちゃんのこと父親が業者さんに話していたことは、家の中から聞いて知ってはいたが、父親は祖父が用を足す以外、ベッドで横になっていることまでは伝えていなかったため、一応、私から言っておいた。
業者さん、「行ってらっしゃい」
私、「行ってきます」
いつもなら家を出たら振り向くことはないのだが、その日は、振り向いて祖父の部屋を見た。
友達、「どうかした?忘れもの?」
私、「ううん、何でもない」
振り向いても、祖父の部屋に何ら変化は見られなかった。
その日の午後
友達、「うちに遊びに来る?」
私、「今日はヤメとく」
友達、「どうして?」
私、「今日から家の塗り替えが始まるの」
友達、「家の塗り替えと、貴方は何か関係あるの?」
私、「お爺ちゃんが家に一人だから、居ないとマズイの」
友達、「お爺ちゃんは、いつも1人じゃない」
確かにそうだ。
友達と別れ、一人で家に帰ると、用を足す以外、ベッドで横になっている祖父が家の塗り替えをしてくれている業者さんと話していた。
業者さん、「おかえり」
私、「ただいま」
祖父、「おかえり」
私、「ただいま」
普段と違い、家の塗り替えをしてくれる業者さんと話す祖父は楽しそうだったため、
私、「行ってきます」
業者さんと祖父、「いってらっしゃ」
私は友達の家に遊びに行った。
家の塗り替えが行われる約1ヶ月間、祖父は家族とも良く喋るようになった。